操業60周年の節目に竣工した新社屋。その正面で来訪者を迎えるのが、立体的な鋳鉄製の「AKIOKA」ロゴです。実はこのロゴ、アキオカのこれまでを振り返りながら社内の技術で製作しました。もちろん外部で製作することもできました。それでも私たちは、会社の信念そのものであるロゴマークを、あえて自分たちの手で鋳ることを選びました。鋳物屋が、鋳物屋の看板を、自社の技術で。その製作の舞台裏をご紹介します。
AKIOKAの信念は、自分たちの手で。
新社屋の外観には、いくつもの「アキオカの技術」が息づいています。窓格子は中国の協業工場で鋳造したもの。そして会社の顔となるロゴマークは、私たち自身の工場で鋳造しました。
ロゴは看板業者に発注すれば、より手軽に、きれいに仕上げることもできたかもしれません。それでも自社製作にこだわったのは、「AKIOKA」という名前が、創業以来私たちが守り続けてきた信念そのものだからです。その象徴だけは、他の誰でもない、自分たちの手で形にしたい――。そんな想いから、このプロジェクトは始まりました。

「AKIOKA」6文字を、4つの型から
「AKIOKA」は6文字。しかし使われている文字は A・K・I・O の4種類です。同じ文字は型を活かして製作することで、無駄なく、かつ品質を揃えて仕上げる――鋳物屋ならではの段取りの工夫がここにあります。1文字が人の背丈ほどもある大型の鋳物を、設計から一つずつ形にしていきました。
製作の舞台裏
製作は、3次元設計から始まりました。文字の形状・重量を試算し、実寸大の発泡スチロール原型を製作。そこから鋳造の要となる「方案(湯道や押湯の設計)」を練り上げます。

大型で複雑な形状の文字を、湯回り不良や引けなく鋳るのは容易ではありません。今回のロゴでも方案を二度にわたって検討し、より確実な方法へと改良を重ねました。

材質選びにも試行錯誤がありました。最初に鋳た「I」は、強度と粘りを兼ね備えたダクタイル鋳鉄(FCD450)。しかし引け(凝固時の収縮による欠陥)が出たため、以降の文字は引けの出にくいねずみ鋳鉄(FC)に切り替えました。発泡スチロールの原型は一つずつしかなく、失敗は許されない――そんな緊張感の中、高温で溶かした鉄を鋳型に流し込み、ゆっくりと冷やして文字の形を取り出していきました。


鋳上がった文字は、押湯やバリを丁寧に除去し、表面を整えます。塗装は、グレーの下塗りの上に黒を重ねる3回塗り。一度は艶消しの黒で仕上げたものの、実物で質感を見極めて艶ありの黒を軽く重ね、「艶の出すぎない黒」に調整しました。「会社の顔」として恥じない仕上がりを目指した、こだわりの選択です。


製作者インタビュー ─ 60年の歩みと、これから
このロゴを作り上げたのは、アキオカの現場で腕を磨いてきた社員たちです。全体を取りまとめた梶谷技術課長、造形を担った田村、仕上げ・塗装を担った永田の3名に、これまでの歩みと、ロゴに込めた想いを聞きました。
全体取りまとめ梶谷 技術課長

アキオカに入社して何年になりますか?
2008年の入社なので、18年になります。入社当時は、各作業を標準化するための手順書づくりを任されて、いろいろな部署を回りながらさまざまな作業を覚えていきました。このときの経験が、今の自分の知識の土台になっています。
これまでのお仕事で印象に残っていることはありますか?
一つの出来事というより、失敗も成功もたくさん経験してきたこと、そのすべてです。どちらも会社の財産として活かせるように、記録に残すことが何より大事だと考えるようになりました。
操業60年という節目を、現場をまとめる立場としてどう受け止めていますか?
この間、生産活動にまつわる安全・品質・コスト・納期のさまざまな問題を真摯に受け止めて、常に改善を続けることの大切さを学んできました。今は、それを次の世代に教える立場だと認識しています。「鋳物で最良のiimonoを」という信念も、お客様と後工程の満足、そして相手への配慮のことだと捉えて、日々のサービス向上につなげています。
「自社の看板を自分たちで作る」と決まったとき、どう感じましたか?
正直、忙しかったです(笑)。でも、せっかくなら現場も含めてみんなを巻き込んで、楽しんで作ろうと、工程の考案から始めました。意識したのは、押さえるべき重要なところはきちんと確保したうえで、“鋳物っぽさ”を出すことです。

完成したロゴをよく見ると、表面に小さな凹みや傷が残っていますが、あえて残されたのでしょうか?
あえてそのまま残しました。AKIOKAは、まだまだ完璧な会社ではありません。だからこそ、これからもっと成長できる。今の私たちの等身大の立ち位置として、残すことを選びました。
ロゴが新社屋の正面に設置されたのを見たときは、どんな気持ちでしたか?
頑張ってくれた現場に「ありがとう」と。すぐに写真を撮ってみんなに展開して、お礼を伝えました。
新社屋でのスタートにあたって、今後の目標を教えていただけますか?
技術課を、模型設計だけにとどまらず、お客様に最良のiimonoをお届けするための取りまとめ役として、お客様にも社内にもさまざまなサービスを提供できる部署にしていきたいと考えています。
最後に、このロゴを見る方々へ、次の60年に向けた一言をいただけますか?
今だけでなく未来を見据えた活動をして、それを継承していくことで、アキオカをさらに発展させていきます。このロゴとともに、末長くお付き合いいただければ嬉しいです。
造形取りまとめ / 生型造形GP フラン田村 昌宏

アキオカに入社して何年になりますか?
中途入社で、12〜13年になります。前の会社でも10年ほど鋳物をやっていて、辞めたときに「10年やってきた経験がもったいない、もう一度鋳物に触りたいな」と。鋳物は嫌いじゃなかったというか、面白くて好きだったんです。岡山県内で、これから一番伸びていきそうな鋳物屋はアキオカだろうと思って、ここに決めました。
ロゴ製作では、どこを担当されたのですか?
造形です。砂込めから、湯道の堰切り、押し湯の選定まで。
一番苦労された点はどこですか?
工法選びですね。実は一番簡単なのは「フルモールド」という方法なんです。発泡スチロールの原型を砂の中に完全に埋めてしまって、そこに直接湯を流す。熱で発泡スチロールが溶けて、そのまま形になる。でも今回のロゴは、文字の角という角にR(丸み)が付いていて、取り付け用の足や吊り上げ用の穴も一体で鋳込む必要がありました。平らな下型の上に原型を置くだけでは、Rが綺麗に出ない。
それで、原型を下型に半分だけ埋め込んで、湯道や押し湯をセットしてから上枠に砂を込める――一番手間のかかる方法を選びました。開枠したときに、表も裏もRが綺麗に出るやり方です。私と梶谷さん、お互い十数年、二十年とやってきた経験を出し合って、「これが一番綺麗に出るよね」とたどり着きました。経験値がないと、たぶん思いつかない工法だと思います。
材質でも試行錯誤があったそうですが、いかがでしたか?
最初に試しで鋳た「I」はFCD450(ダクタイル鋳鉄)だったんですが、引け(凝固時の収縮による欠陥)が出てしまって。発泡スチロールの原型は一つずつしかないので、失敗できないんです。それで以降は、引けの出にくいFC(ねずみ鋳鉄)に変えました。「A」も1個目で引けが出たので、2個目は押し湯の大きさやガス抜きの位置を変えて鋳直しています。一文字ずつ、細かい改良の積み重ねでした。
完成したロゴを見て、どうでしたか?
正直、「もうちょっとやりようがあったな」と(笑)。仕上げも、色も、まだまだ良くできたと思っています。もし次に同じような依頼が来たら、今度はフルモールドで、もっと綺麗に作りますよ。
若い方々に伝えたいことはありますか?
人の話を聞くこと。これが一番大事ですね。私も前の会社で、仕事のできる親方に付いて、湯道の置き方、堰の切り方、押し湯の選び方を教わりました。親方は経験でしか話していないんだけど、後から自分で勉強したときに、親方の言っていたことが教科書の計算式にちゃんと収まっていると分かった。経験と理屈、その両方が結び付いたときが一番面白いんです。自分で考えたものが製品になって出てくる楽しさを、若い人にも味わってほしいですね。
最後に、これからのアキオカについて一言いただけますか?
会社はこれから大きく成長していこうとしています。どうやって成長していくのか、その過程に自分が関わっていける部分があるなら、面白いだろうなと思っています。
仕上げ・塗装取りまとめ / 品質検査GP永田 嵩人

アキオカに入社して何年になりますか?
派遣の期間も入れると、ちょうど3年になります。その前は愛知や広島などで、塗装、部品の組み立て、木材加工と、いろんな現場を経験してきました。新卒で最初に入ったのが塗装の仕事だったので、そこからの縁ですね。岡山に来るタイミングで紹介されたのがアキオカでした。
そこから正社員になられたとのことですが、決め手は何でしたか?
働きやすさです。現場がフレンドリーで、相談がしやすい。「ここはまずいよね」という改善の声も、ちゃんと聞いて動いてくれる会社なんです。派遣で2年半働いてきた中身を評価してもらえるのもあって、ここでやっていこうと決めました。
ロゴの仕上げで大変だったのはどこですか?
焼き付き(鋳造時に砂が溶着する欠陥)ですね。表面の半分近くに出てしまって、ショット(投射処理)では落ちない部分をサンダーで削っていくんですが、削りすぎると凹んだり、本来の形が崩れてしまう。その加減が難しいんです。特に「K」の”くの字”の内側のような狭いところは、棒サンダーみたいな小さい工具しか入らないので、時間がかかりました。目立つ穴は溶接で埋めてから削って、ショットで肌を整えた文字もあります。
塗装にもこだわりがあるとお聞きしましたが、いかがですか?
実は3回塗っています。まずグレーの下塗りで面を整えて、その上に黒を重ねる。最初は艶消しの黒で仕上げたんですが、見てみたら真っ黒に見えすぎて「ちょっと違うな」と。それで上から艶ありの黒を軽く重ねて、艶の出すぎない黒に調整しました。色味は任せてもらえたので、実物に塗って試しながら決めています。屋外に置くものなので厚めに塗ってあって、定期的に手入れをすれば何十年でも持つはずですよ。
完成したロゴを見て、どうでしたか?
思ったよりも綺麗にできたなと。クオリティは高かったと思います。ただ、もう一回作るなら、今回の半分以下の時間でもっと綺麗にできるはず、とも思っていますけどね。
今後の目標を教えていただけますか?
不良を減らすことです。せっかく作ったものを溶かして作り直すのは、材料も手間も捨てているのと同じですから。仕上げの段階で品質を上げて、後の工程での手直しを減らしていく。一人ひとりの少しの意識で変わっていく部分だと思うので、そこを積み重ねていきたいですね。
設置、そして次の60年へ
一文字ずつ丁寧に鋳造・仕上げされたロゴは、専用の金具でベースに固定され、新社屋の正面に設置されました。夜にはライトアップされ、昼とはまた違った表情を見せます。

創業から60年。「鋳物で最良のiimonoを」という信念を胸に、その象徴となるロゴを自分たちの手で鋳た私たちは、これからも最良のものづくりを届けてまいります。新社屋にお越しの際は、ぜひこのAKIOKAロゴにもご注目ください。